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『オーブランの少女』を読んでみた

 暑いですね。今日は晴れですが、また明日から雨だとか……。梅雨が明けたはずなのに、何でこうも雨ばかり降るのでしょうか……。夏は苦手な方ですが、こうも毎日天気がぐずぐずしていると、より損した気分になってしまいます。あ、お久しぶりです。←

 

さて、今回は『オーブランの少女』。この作家さん、どうやら私と同世代のお方のようです。友達でもなんでもないのですけど、同世代の方が活躍してると聞くだけで、妙に嬉しくなってしまいます。

 

閑話休題。さっそく、一編ずつ感想をば。よろしければお付き合いください。そこまで露骨なネタバレはしないつもりです。

 

・オーブランの少女

表題作。オーブランという庭園と、その管理人姉妹に関わる短編です。序盤からなかなかキツめの描写が来ますが、中盤の雰囲気とのコントラストが映えますね。読み終わった後に、「ハッピーエンドじゃー!」とはなりませんが、個人的には好き。なんていうか、グロのある少女革命ウテナというイメージがあります。とにかく、中盤の情景描写がとても美しい。

終盤はこれまたえげつない描写を畳み掛けて来ます。グロ耐性がなく、なおかつ想像力が豊かな方にはキツそうですが…ミステリ好きな人なら、大丈夫かなw犯人の正体というか、本性にはぞくっとさせられます。

 

・『仮面』

どういうわけだか、読んでいてスタンリー・エリンを思い出しました。彼の作品は、こんな雰囲気がだった気がするなあ…と。主人公は男性医師。舞台は近代のイギリス。舞台設定が近いのもあるんでしょうか。

最終的には、女の覚悟や生き様の話に帰結します。女はいつの時代もしたたかだねえ…うん、知ってる。こういう女は、いつの時代もうまく行きていくんだよなあ。もちろん、相応の代償は支払うことになるのですが。

 

・『大雨とトマト』

世にも奇妙な物語でもいいんじゃない?  と思える一作でした。といっても、私あれあんまり観たことないのですけど。

小さな安食堂の主人と奇妙な常連、突然店に現れた少女の3人が主軸となって、ストーリが進みます。この少女の一言に、主人公の心は翻弄されまくるシーンが山場なのですが、そんな彼をハタから見たら、きっと面白いんだろうなあ。本人的には修羅場ですがw

これは途中まで読んで、何となーくですがオチが読めました。でも、最後まで尾をひく不穏な空気感は流石だと思います。

 

・『片想い』

オーブランの少女、というタイトルで検索すると、予測検索でよく出るのが『百合』という言葉。しかし、私が思うにこの短編集で百合というか、少女愛を全面に押し出してるのは、この作品じゃないかと思うのですよ。昭和初期の女学校(寄宿舎付き)が舞台。女学校だから、今でいう女子高生か。エス("マリみて"みたいなお姉さまと妹の関係)とか、清楚で素敵な同級生への憧れが詰まっています。マリみて好きや、昨今の百合モノ好きな方にはオススメじゃないでしょうか。誰にでも秘密はあるものですが、これは…私なら逃げ出すなあ。ボロが出たら人生終わりだもん。

 

・『氷の皇国』

ミステリーとして読むには、一番これが面白かった。架空の北の国の斜陽が大筋。スタイルとしては、古畑任三郎式というか、読者には最初から犯人が開示されています。それを登場人物のひとりが解き明かしていきます。この人は、いわゆる安楽椅子探偵なので、時代背景や調査期間を考えても、よくそこまで証言かき集めたね…という感はあるものの、推理のシーンは引き込まれました。そして、これはスカッとジャパンよろしくハッピーエンド来るか?  と期待させつつ…まあ、仕方ないよなあというオチでした。仕方ない、んだけどなあ…現代でもきっと、こういうことはあるんでしょうね。しかし、ラストシーンを見るに、これが最善だったのかなと思わせてくれます。

 

氏の話題作『戦場のコックたち』を読んでみたいと思わせてくれる、よい短編集でした。割と賛否両論のようですが、個人的には久しぶりにぶっ通しで読ませてくれる、楽しい作品でした。

 

…そして、ここまで感想を読み返して。アニメのタイトル、ふたつも入ってるやんけ……。「?」という方は、ぜひ調べてみてください。ブルーレイやDVDは出ていたと思います(うろ覚え)。

オーブランの少女 (創元推理文庫)

オーブランの少女 (創元推理文庫)