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ぐだぐだだらだら書くブログ

小説の感想から思いついたことまでだらっと書いていくブログ

『夏至南風』読んでみたよ

なんでか全然眠れないので書いてみます。有栖川有栖はどうしたって? 面白いけど、ちょっと待って。その前に大学生アリスと社会人アリスを読み比べたいんだよう。

 

毎年、夏になると読んでいる小説がある。『夏至南風』。カーチィーベイと読む。知ってる人は知ってるでしょう。長野まゆみの、割と前の小説です。あ、言い忘れてたけど以下ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長野まゆみといえば、所謂BL的なノリをやんわりと童話っぽい雰囲気でコーティングしたような小説を書く方です。最近のはそうでもないけど、特に昔はそんなイメージだった。

私の中の長野氏は、まさしく上に書いた通りだったので、初めて夏至南風を読んだ時には、1ページ目からすっかり目を丸くしてしまった。アブノーマルなんですよね、もうBLとかどうでもいい感じ。性的なタブーにはだいたい触れてるかと。

 

主人公は釦藍。クーランて読みます。中国読み? お話は彼の語りで進んでいくけど、なんと彼は周囲の音が、というかとりわけ人の声が一切聞こえない。そして、喋ることもない少年です。これは障害とかではなく、ポリシーを持って彼がわざと『やめている』らしい。そんなことできんの? ってツッコミは、ここでは野暮なのでしない。この話に現実感を持ち込んだら負けです。

もう一人の主人公と呼べるのが碧夏(ビーシア)。これがまた誰の目も惹く美少年。あえていうなら、手首のあたりに小さな火傷跡? があるかなーくらい。どこへ行っても、彼は注目の的です。

そしてこの碧夏、とても傲慢で不敵。でもその傲慢さと不敵さが、逆に色香を強めているともいう。

 

本来交わることのない二人は、ひょんなことから、指を触れるだけで相手が何を伝えたいのか、瞬時に分かり合えるということに気づく。釦藍は、あ、そうなんだ、くらいだけど、碧夏は不満気。そして、それまで指先での会話が可能な唯一の人物だった、釦藍の弟・緑(ルウ)も不満気。兄ちゃんを取られちゃった気分なのだろう。可愛い。

 

世間にも他人にも無関心な釦藍の周囲では、奇妙な出来事が続く。死んだと思われていた親族と思しき男が突然現れたり、不審な行動をとる叔母・瑛石(インシー)。そして、よく晴れた暑い日曜日の礼拝堂そばで、釦藍と緑は、腐りかかった少年の死体を見つける…というのが、だいたい前半。なげーよ。

 

この話では、とにかく若者(特に少年)は、とてもエロティックにその姿を表現されます。反対に、大人はその劣化具合が印象的に表されます。そして、少年の死体と、叔母の車の後席にあった、暑さで腐りかけた野菜…この世界では、腐乱がなんだかとても良いもののように表現されています。少年の死体に至っては、その姿を見た緑がうっかり口づけたり(その後、口から黒い水が出てきてびびる)、釦藍に至っては、腐ってるくらいがいいじゃない、とご満悦。お前らやっぱり変よ…。本当は、腐ったら人間も野菜も変色するし、臭いもするから、いいものでもなんでもないんですけどね。この小説を読んでると、なんか良いもののように思えてしまいます。

 

そして、私としては一番印象的なのが、釦藍の台詞。「碧夏、君はまだ誰かが君を愛してくれるって期待してるんぢゃないのか。やめてしまえよそんなこと、意味がないから」

人間関係で悩む時、私はいつもこの言葉を思い出します。まあ、若者特有の極論ともとれなくもないですが、私の人付き合いに抱くイメージにはかなり近いのがこれ。この台詞に、碧夏はやっぱり膨れます。級友はもちもん、教師や実の母からすらその美しさを崇められる碧夏は、孤独なのでしょう。その孤独を見透かされたから、嫌な顔をしたのかな。美しさを差っ引いても愛してくれる人。それに飢えているのかと思うと、彼は悲しい存在と言えます。

 

そんな彼の願いは、歪んだ形で最後に叶えられます。一連の奇妙な出来事に足を突っ込んでいた碧夏は、なにかやらかしたのか(釦藍が無関心なので、その辺の事情は投げっぱなしなので詳しくわかりません)、目の前に現れた車から降りてきた男たちに殴られ、そのまま拉致されます。釦藍は、ただそれをぼんやりと見つめています。

そして、暑い夏が過ぎて秋がやってきた頃、碧夏は見つかります。生きていました。でも、面影が全くありません。どんな拷問を受けたのか、身体はぶよぶよに膨らみ、美しかった顔もめちゃくちゃ。それでも、釦藍は彼を碧夏だと確信します。手首に、見覚えのある小さな火傷跡を見つけたから。

半分腐りかかった碧夏の身体は、美しさとは対極にあるものです。それでも、釦藍は、愛おし気に彼の名を呼び、傷跡に口付けるのです。釦藍は、腐乱を愛する少年ですから、そのくらい余裕です。

 

 

 

 

正直言って、悪趣味な話です。後味も最悪だし、一部のストーリーは、見ての通り投げっぱなしです。でも、なんでかこの本だけは売らずに手元にあります。そして、梅雨が明けた頃、いつも読みたくなるわけです。あの時期の風が、作中の街に吹く夏至南風に似てる気がするからでしょうか。

はっきり言って、お勧めはしません。特に長野まゆみ初心者には。あれが長野まゆみか!と思われてしまうと、それはなんか違うよっていうか。でも、一回は感想が書きたいなあと思ったので、書いてみました。何度もいうけどお勧めはしないよ! 特に男性には全くもって勧めないよ! だからアマゾンのも載せないよ!

それでももし、ご興味ありましたら、ぜひ自己責任でご一読ください。